水陸両用戦車 特二式内火艇 カミの制作をレポート!
今回は、塗装・仕上げを行います。

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サイバーホビー 1/35 WW.II 日本海軍 水陸両用戦車 特二式内火艇 カミ【CH6678】(レポート後編)

 話題の商品をスタッフが実際に組み立ててみた、プラモデルの「試用レポート」。今回は、太平洋戦争開戦直前に開発された、日本海軍所属の水陸両用戦車 特二式内火艇 カミの制作をレポートします。

 取り上げたモデルはサイバーホビーの新作で、とてもディテールがよく、組み立てしやすい戦車です。前回の組み立てに引き続き、今回は、塗装・仕上げを行います。

特二式内火艇 カミのここが凄い!!

サイバーホビー社製、初の1/35スケールモデルに人気の高い戦車が登場です。

パラオに眠る実車取材に基づき、日本人スタッフによる緻密な設計とドイツAFVで培った金型技術を惜しみなく注ぎ完全新金型で再現。

サイバーホビーならではの緻密な設計と金型技術のコンビネーションはIII号戦車、IV号戦車シリーズと同等。

スライド金型を多用し、フォルムやディテールの再現度を高めつつ、組み立ては簡単にというコンセプトも引き継いでいます。

履帯(キャタピラー)も組み立てを容易にするDS素材でパーツ化。

まさかの「カミ車」フルインジェクションキット。全てのAFVファン、日本軍ファンにお勧めします。

パッケージを参考に塗装します

  •  サイバーホビーから初めての日本戦車は、マニアックな帝國海軍所属の戦車で特二式内火艇 カミです。内火艇といえば艦船に搭載されている舟をイメージしますが、こちらは戦車。前後にフロートをつけると海上航行ができるそうです。キットはそのフロートが付いていないタイプ。ボディがかなりずんぐりとしているのは浮力を得るため、空間を大きくしているためだそうです。戦車の内部はかなり狭いのが常ですが、このカミに限ってはそれはなさそうです。

     

    なんとなく愛嬌のある戦車ですが、パッケージはリアルに描かれています。ミリタリーものは特にパッケージがリアルでカッコイイ製品が多いです。特に資料が無くてもこれを見ながら作るといいかもしれません。

塗装前はこんな感じです

  • さっそく塗装といきたいところですが、パッケージの絵と組み立てた、未塗装の模型ではまったくイメージが違いますね。特に履帯(キャタピラ)に重量感がありません。色もそうですが、なんだかただのゴムバンドのようです。当然ですが、このままでは本物の金属のような質感は得られません。まずは、この履帯に金属の重量感を出したいと思います。

まずは本物の履帯の重量感を再現

  • 履帯(キャタピラ)に重力が掛かっている状態を再現して、見た目にも重さを感じられるようにしたいと思います。そこで、履帯(キャタピラ)の重力のかかるところ(上部の車輪と車輪の間)に詰め物をして、この状態で固定します。カミは一番前が動輪になっているので、前方はあまり弛まさないほうがリアリティーがあります。今回はボンドで固定しましたが、緩ませたい場所にピンバイスで穴を開け、針金を通して固定する方法もあります。

見事に履帯に重量感が出ました

  • ボンドが固まりましたので詰め物を外します。箱の絵よりちょっと大げさになりましたが重量感が出てきました。これだけでもずいぶん印象が変わりますし、戦車模型の制作には欠かせない部分だと思いますので参考にしてください。この後塗装を施す事でよりリアルな履帯(キャタピラ)にしたいと思います。

ボディー塗装の下準備

  • 塗装する前に下準備を行います。塗装のノリをよくするため、ボディをウエットティッシュで拭いておきます。薄め液をエアブラシで薄く吹き付けて処理する方法もあります。エッチングパーツ(写真矢印)は金属で、塗装がノリにくい為、メタルプライマー(写真右)を塗って下準備をしておきます。

いよいよ塗装をしていきたいと思います

  • モデルのカラーが塗装の基本色と近いため、サーフェイサーを吹かずにそのまま塗装をしたいと思います。ウォッシングする際、エナメル溶剤を使う場合は保護の意味でもサーフェーサーをしっかり吹いたほうがいいかもしれません。基本色(クレオス軍艦色1)をいきなり塗装する前に明暗を付けるために、暗い部分に暗い色(フラットブラック)を吹き付けます。

     また、今回は組み立て完成後の塗装なので塗れない(塗らない)所をごまかすテクニックとしても活用します。○の部分などのクリアパーツには下準備として事前にマスキングを忘れずに。

フラットブラックが完了しました

  • 写真のようにフラットブラックを塗装しました。陰部分と同時にボディーの隅や角、パネルの継ぎ目などにもフラットブラックを吹いておきす。転輪部分も後からフラットブラックを塗りますので予めエアブラシである程度吹いておきます。ここまでは塗装の下地ですが、少し完成のイメージに近づいてきました。

下塗装の上に、基本色を吹きます

  • ベースになる塗料であるクレオス軍艦色1【31】をエアブラシで吹きます。先ほど塗装したブラックの部分を意識して残しながら塗装します。単色を吹くだけと違い、少しパネルにメリハリが出ていますね。影の部分は足りなければまた後から足すことも可能です。戦車模型の塗装は繊細なカーモデルと違い、重ね塗りしても問題ありませんのでいろいろと試してみてください。

筆で履帯(キャタピラ)を塗ります

  • 次に筆に持ち替えて履帯(キャタピラ)を塗ります。指定色は「黒鉄色」です。それを塗ってからウエザリングで汚してもいいのですが、箱を見てもなんだか少しイメージが違います。やっぱり錆びが浮いていないとリアル感がありません。そこで「レッドブラウン」のエナメル塗料を塗りたくります。錆びが浮いている感じが出てリアルな感じが出てきました。

塗装の基礎が完成しました、乾燥中です

  • 履帯(キャタピラ)染めが完了しました。なんだかいい感じになっているのがお分かりでしょうか。エナメル塗料は要らないところについてもすぐにふき取ることができるので便利です。でも、戦車模型では多少いろんなところについても気にする必要はありません。錆びや汚れていると思えば逆にリアルになっているとも思えます。ところどころ故意に塗ってしまっても良いぐらいですね。

車体をウォッシングします

  •  次は車体全体をウォッシングして「塗装の傷み」や「泥汚れ」を再現します。エナメル塗料の「フラットブラック」に先ほど使った「レッドブラウン」を混ぜています。これをシャバシャバに薄めて使用します。薄めるのはエナメル溶剤ですが、パーツを侵食する恐れがあるので灯油を使う方もいます。ジッポオイルでも代用できます(火気にご注意ください)。

     さらに今回は「ピグメント」代わりに机の隅にあった「との粉」を入れて見たいと思います。どんな効果があるのか楽しみです。「との粉」は木目を消す為の粉でホームセンターの塗料コーナーに売っています。「ピグメント」代わりに持っておくと汚しに使えます。塗料に混ぜると泥汚れが表現できます。

ウォッシング塗料を全体に塗りました

  • 普通はウォッシングの時に「との粉」はあまり使いません、今回は実験としてチャレンジしてみましたが、ちょっと失敗してるような気が…と思いつつも、とにかく全体に塗ってみました。失敗した場合はまた下塗りからやり直せば良いのでいろいろとチャレンジしてみてください。

土汚れ効果が良い感じです

  • こウォッシング効果を出すためにエナメル塗料をふき取ります。ちょっと黒の残りが強く出た方が良かったかもしれませんが、「との粉」が土汚れのような感じで残っていて、全体がいい感じになりましたので、このまま進めていこうと思います。

次に「錆び」の表現をします

  • 次に「錆び」の表現をしたいと思います。タミヤ製の「ウェザリングマスターC」に「錆び色」があったので使います。これはパステルですので化粧をするようにスポンジで擦りつけるのが本来の使い方だと思いますが、今回はエナメル塗料に混ぜて使います。エナメル塗料には錆び色に近いと思われる「クリヤーオレンジ」を選びました。

パネルの継ぎ目の溶接部分に錆を表現

  • エナメル塗料に「ウェザリングマスターC」をしっかり溶かして、ボディーパネルの溶接跡に塗ってみました。いい感じで錆びていますね。塗装だけでは絶対に出せない錆び感が見事にでてきます。錆びが出る場所にはある程度の法則があります。家の回りでも探すと様々な所に錆びが有りますので一度研究してみてください。

錆びと雨だれででリアル感アップ

  • 錆びを塗っていると、どんどんリアルに見えてきて楽しくなりますが、くれぐれもやり過ぎには注意しましょう。効果的に、錆びそうなところを中心に塗ります。パネルの平面に雨だれを描くと古びた感じが演出できます。筆で同じ塗料を薄っすら縦に線を入れるように書いてから、綿棒でふき取り調整します。こちらも度が過ぎると廃車っぽくなってしまいます。 。

隅々まで注意してウェザリングをします

  • リア上部です。マフラー部分はちょっとやり過ぎましたが、ウェザリングマスターを使うと誰でもこんなにリアルに出来ちゃいます。パネルのジョイント部分、ヒンジ部分など錆びそうなところに塗っておきます。その際雨が流れる方向に雨だれを描くのを忘れないようにします。この作業を、隅々にまで注意をして全面に渡って行う事によりグッとリアル感が出てきます。

ボディー部分以外も同様に仕上げます

  • リア部分です。効果的に錆びを入れておきます。ここもパネルが少しのっぺりしていたので効果的に雨だれ表現を入れています。特にリア部分は何かと汚れやすいはずなので入念に仕上げます。スクリューの指定色は「ゴールド」になっていますが、ボディと同様の劣化感を表現するために「ゴールドリーフ」を塗っておきました。ちょっとつや消しみたいになります。

さらに細部を仕上げていきます

  • フックとジョイント部分を仕上げます。錆びを塗っただけでもかなりリアルだと思いますが、さらにその効果を活かす為に鉛筆を使うテクニックをご紹介します。フックやジョイントは塗装も剥げて鉄むき出しになっていて、ロープなどで擦れるため黒光りしています。擦れそうな部分を鉛筆で塗る事で、実際に使い込まれた金属みたいな黒い光沢が表現できます。

履帯(キャタピラ)も仕上げます

  • この鉛筆テクニックは履帯(キャタピラ)の金属感を出すために使ってきた定番のテクニックです。シルバー塗料で塗る方法もありますが、鉛筆の方が失敗が少なくて済むので、おすすめです。

     履帯(キャタピラ)はもっと土汚れがあっても良いと思う場合は、「との粉」と「土色塗料」を混ぜて塗りたくってもいいかもしれません。その場合は全体のバランスを考えて車体下部の汚れも増やす事をお忘れ無く。ミリタリー専用のピグメントを使ってリアリティーを追求することもできます。

「チッピング」で塗装の剥げを表現

  • 塗装が剥げてきた部分の表現には「チッピング」というテクニックを使います。過酷な場面で活動する戦車がすぐに錆びてはこまるので、塗装の下地に防錆塗料が塗られています。上の塗装がはがれて防錆塗装が見えたた感じを表現する事を「チッピング」といいます。「マホガニー」塗料を細い筆でチョンチョンと塗っていきます。チッピングもやり過ぎると逆効果になりますので注意してください。

砲身部分をウェザリングマスターで仕上げます

  • 砲身部分は砲弾の熱で焼けているので、ウェザリングマスターの「ガンメタル」をこすりつけて表現しました。「スス」色を持っている方はそちらをお使いください。(今回は手持ちがありませんでした)機銃も同じように塗ります。

クリアパーツもクリア塗装で仕上げます

  • 信号灯はクリアの「レッド」「ブルー」「イエロー」色で塗りました。砲塔部分をよく見ると、錆びや雨だれの仕上げが少しラフになっています(反省!)。様々な表情があっても良いと思いますが、最終的にはやはり手抜きはバレてしまいますので、最後まで気を抜かずにがんばりましょう。

最終仕上げとして「デカール」を貼ります

  • 最終仕上げとしてデカールを貼ります。貼るのは2箇所だけで、番号か日章旗を選べます。今回はパッケージと同じ日章旗を選びました。つや消し塗装の上は凸凹していますので、しっかりと馴染ませる必要があります。

     まず、デカールを張る場所にマークソフターを塗ってからデカールを貼り、その上から再度マークソフターを塗ります。しばらくてやわらかくなったところで、綿棒を使い圧着させます。綿棒は中心から転がして空気を抜いていく感じです。仕上げにアクリルのつや消しクリアを筆塗りしておきました。

完成しました。なかなかリアルにできました

  • お疲れ様です。完成しました。戦車は組み立ても楽しいですが、やはり塗装するともっと楽しいですね。戦車のように、思い切って汚しまくれる模型も他に無いのではないでしょうか。戦場のビネットやジオラマなどで戦闘中を表現する場合はもっと大胆に汚したり、砲弾を受けた後を付けたりしても面白そうです。

完成品ギャラリー

まとめ

今回制作した「サイバーホビー社」製品はパーツの噛み合わせがとても良く組立が非常にスムーズにできました。パーツ点数も少なく組み立てしやすいモデルとしておすすめです。ミリタリーシリーズの戦車は組み立て後は塗装面が広いのでいろんな塗装にチャレンジできるのもお勧めのポイントです。今回制作したモデルは数少ない日本戦車であり、「特二内火艇」という特殊な戦車でプレミアムな一品です。是非とも戦車好きにも作って頂きたいモデルです。合わせて日本兵も一緒に組み立ててビネットやジオラマなどを作ってみてるのも楽しいと思います。

 ミリタリーシリーズの1/35モデルは各モデルメーカーより凄い数の製品が発売されています。エッチングパーツや改造パーツなども発売されていますので、楽しみは無限大に広がります。また、制作が比較的簡単な初心者向けのモデルも多くありますので是非チャレンジしてください。

2011.11.9. ガルダン

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