[ 2022年 3月 1日付 ]
フェーズメーションのMC昇圧トランス「T-320」を試聴しました!
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こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
今回は、協同電子エンジニアリング(株)・フェーズメーションから、2021年11月に発売された、MCカートリッジ用昇圧トランス「T-320」の実力をチェックしてみました。

フェーズメーションと言えば、フォノイコライザーの超高級ハイエンドモデル「EA-2000:330万円(税込)」「EA-1200:121万円(税込)」を発売して話題となっています。
MC昇圧トランスも「T-2000:99万円(税込)」「T-1000:33万円(税込)」とハイエンドモデルを発売していますが、そのノウハウを生かした下位モデルもしっかりと開発をされています。
MC昇圧トランスでは、ミドルクラスの「T-550:11万円(税込)」を昨年発売! 今回更にコストダウンを果たした「T-320:59,400円(税込)」がラインナップされたので、ご紹介いたします。
「T-320」のご紹介
「T-320」は、「T-3(2005年発売)」「T-300(2013年発売)」 のバージョンアップ商品で、蓄積されたノウハウが集約されています。特にお買い得な製品を追求! 「費用」対「効果」の大きい項目を選んで商品価格のアップを極力抑えた設計に仕上がっています。
カートリッジの出力は、典型的な微弱信号であり、扱う上で交流理論がそのまま通用しないところに経験とノウハウの蓄積がものを言う世界です。トランスには、必ず漏洩磁束の現象が伴い、その漏洩磁束なるもの、トランスの性能では厄介なものです。
交流理論からも当然触れられる現象ですが、理論は学問であり、物作りは技術の分野であり、そこにノウハウの存在する意義や原点があります。理論を元に試行錯誤を繰り返すことで成せる技が生まれると言うもの、ノウハウが特許技術に成り得ない所以とも考えます。
試行錯誤から掴み取ったコストを意識しつつ、商品企画に利用し、作り込みに励んだ結果が「T-320」となります。

「T-3」発売:2005年、35,000円(税込)

「T-300」発売:2013年、49,500円(税込)

「T-320」
上位モデルのノウハウを継承
「T550」で培ったノウハウに、より音質に磨きをかけ、デザインも踏襲したとするモデルとして発売されており、抜群のコストパフォーマンスが実現されています。トランスの性能を100%活かしきる。シャーシ設計はそういった意味で非常に重要であり、音質を左右する大きなファクターともいえます。
フロントパネルに10mm厚アルミスラントパネルを贅沢に採用。シャーシとカバーに1.2mm厚の銅メッキ鋼板を採用し筺体の剛性を確保。
また、ステンレス製の非磁性体ネジを組み立てに使用し、磁気歪の低減を図るなど、細心の注意を払って設計されています。


自社開発の特殊分割巻線構造によるMC昇圧トランス
トランスの巻線構造には、独自の特殊分割巻き線構造を採用。0.2mm厚の78%パーマロイ材による大型EIコアに低損失極太銅線を巻き上げることにより、広帯域で優れた周波数特性と位相特性を実現。
これにより、高い低域リニアリティと高効率昇圧(低損失)という優れた特性を達成し、可聴帯域内の位相歪を減少させることに成功。全帯域に渡り、生命力のみなぎる細かな空間表現と、より明確な音像定位を実現しています。
トランス類は試聴を重ねながら、丁寧にベストな巻き方を探求、全てフェーズメーション自社内で巻かれているオリジナルです。

MM/MC切替SW搭載
MMとMCの切替SWをフロントパネルに配置。TRANS/PASS切替。より利便性を高めました。もちろん、すべてこだわりの、MADE IN JAPAN製品です。

仕様
適応カートリッジの出力インピーダンス:1.5~40Ω
負荷インピーダンス:47kΩ
昇圧比:26dB
周波数特性:10~50kHz(±2dB)
外形寸法:136(W)×92(H)×134(D)mm
質量:1.3kg
入出力端子(RCA):金メッキRCA端子

試聴してみました
※一緒にお借りした「DG-100」で消磁してから試聴しました。

入出力はRCA端子(アンバランス)各x1系統のシンプルな構成で使いこなしは入門モデルとなりますが、音質はかなり本格的で上位モデル「T-550」に肉薄するハイコストパフォーマンスな製品です。プリメインアンプに内蔵されているトランジスタ方式のMCヘッドアンプ回路からのグレードアップに最適な製品としてお勧めいたします。
今現在プリメインアンプのMC端子をお使いの方は、ぜひ昇圧トランスの導入をご検討ください。特別高級なアンプを除き、ほとんどの場合「パワー感」「響き感」「エネルギー感」が改善される可能性があります!!
ご存じのように、MCカートリッジの出力は大変弱く、ヘッドアンプ回路を駆動するのは極めて難しく、MC昇圧トランスを使って電圧を上げてから駆動した方が音質的に有利となります。アンプのフォノイコライザー回路もMM入力で駆動した方が利得を少なくできるので、全体的に音の余裕が生まれます。
トランスを導入すると、エネルギー感が改善されて音楽が活き活きとしてきます。SNも改善されて音の鮮度が全体的に高まり、特に弱音表現が際立つことが確認できます。中央に定位するヴォーカルが浮かび上がり、それを囲む楽器の奏者との距離感が再現できるようになります。

この「T-320」は躍動感、開放的が向上し、リアル感を伴って音楽を楽しく聴くことができる、よくできたトランスです。本格的なMCトランスは高価なものが多いですが、コストパフォーマンスという観点からも非常に優れた良心的な製品だと思います。
昇圧トランスを使わなければ出せない透明で芳醇な本格的サウンドを、この価格で実現できるのは朗報と言えます。

(試聴に使ったLPディスク)
※出力のケーブルは付属していませんので、RCAケーブルが別途必要となります。