[ 2024年 8月 6日付 ]
こんにちは、ハイエンドオーディオ "ichinose" です。
今回は、DENONより、最新の進化形プリメインアンプ「PMA-3000NE」をご紹介いたします。最新のDENON製品ならではのファインチューニングされた内容と、従来モデルとの違いなどを解説いたします!!
◆DENONのアンプと言えば何と言っても「UHC-MOSシングルプッシュプル回路」です!!
究極のシンプルを実現する「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」とは?
「UHC-MOS-FET」とは「Ultra High Current-Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor」の略です。
本来は大電流をオン/オフするスイッチング用のトランジスタであり、オーディオ用に開発されたトランジスタではありませんでしたが、その潜在能力は実に強力で、通常のMOS-FETの約35個分の増幅能力があります!! 構造上、静電破壊しやすくオーディオ用として取り扱いには高度なノウハウが必要とされていました。
デノンの研究部門は、Hi-Fiアンプの理想形を求め「少ない半導体素子で大電流を取り出す」という“一見矛盾した追求”を徹底研究。「UHC-MOS-FET」を使い、アンプの理想形「少ない半導体素子で大電流を取り出す」という当時の世の中には無かった独自のパワーアンプ回路である「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」の安定動作を実現し、量産可能な回路を開発しました。
※「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」を初めて搭載したのは30年以上前の1993年に発売された最高級プリメイン「PMA-S1」当時400,000円。
以降「PMA-2000」や「PMA-SX」などの高級モデルに搭載してきた DENONならではの伝統の技術と言えます!!
この究極のシンプル「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」をデノンは常に磨き続けています。「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」を生かすための設計思想の最新モデルが「PMA-3000NE」なのです。
【 高忠実駆動力とミニマムシグナルパス 】
◆新型パワーアンプ回路
究極のシンプル、新型「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」。
「PMA-A110」の差動2段アンプ構成を更に進化させ、「PMA-3000NE」では遂に究極のシンプルと言える差動1段アンプ構成に到達。
◆ミニマムシグナルパス
・徹底的ワイヤーレス化
内部を見ると中央の電源トランス部分以外にはほとんどケーブル類が使われていないワイヤーレス化を実現。基板の多層化やバスバーを使用することで、「PMA-A110」と比べても圧倒的にシンプルに進化しています!! 結果的に信号経路の短縮化を実現しており、S/Nの改善に大きく貢献しています。
「PMA-A110」の2層基板+片面のプリ部複数基板に対して、「PMA-3000NE」では4層基板を採用する事でプリ部基板を集約。基板間を結ぶFFCケーブル(フィルム状のケーブル)やコネクトワイヤーを可能な限り減らし、さらに基板上を走るワイヤーを廃止することで、飛び込みノイズを大幅減、S/N改善に貢献しています。
・フォノイコライザー回路基板を独立
「PMA-A110」ではプリ基板部に内蔵されていた、増幅量の多いフォノイコライザー部を独立基板に集約、それぞれへの影響を排除し音質を改善。
・ヘッドホンアンプを独立
パワーアンプ出力をヘッドホン出力にゲイン調整して送っていた従来機に対して、本格的ヘッドホンアンプ回路基板を独立、信号経路を圧倒的に短縮し、ヘッドホン出力の音質を改善。
◆パワーアンプ部の改良
・電圧増幅段をパラレル化
徹底した熱管理をすることによって「UHC-MOS Single Push-Pull Circuit」を安定して動作させる事に成功。また、基板の多層化や箔厚も厚くしています。
・2層基板の採用
「PMA-A110」の単層基板に対して「PMA-3000NE」では2層基板を採用。より一層のミニマムシグナルパス化を実現。また、大電流を扱う基板上の箔厚みは通常の35μmに対して約4倍の140μmまで厚くなっています。基板の銅箔の膜を厚くする事で回路のインピーダンスを下げ、ノイズとして流れる信号が削減され、SN比も改善されています。
※「PMA-110」も2倍の70μmに強化されていましたが「PMA-3000NE」では更に倍の140μmが採用されています。
・徹底的なワイヤーレス化
ワイヤー(電線)を可能な限り減らし、製品間のばらつきや、S/N改善を実現。ワイヤーを使う事による製品間のバラツキをなくすため「バスバー」による配線を採用。
※「バスバー」配線とは何でしょうか・・・メリットとデメリットも
従来の電気ケーブルによる配線を肉厚の金属プレート(銅板など)によって接続している配線の事。より高音質を目指して、パワーアンプからの効率的かつ高信頼な出力伝送を可能にします。
・ケーブルの配線と比べて剛性が高く純粋な構造のため、より大きな電流をロス無く伝送する事ができる。
・同じ質量のワイヤと比較してより大きな接触面積を確保できる。
・露出している表面積が大きいため、ケーブルと比較して効率的な熱放散を実現。
・総合的に採用する事で、配線取り回しを最適・効率化でよりシンプルな配線を実現できる。
・欠点は機器に合わせて大きさや形状の加工が必要となりコストアップがかかる。
オーディオ機器以外にも、電気自動車の大容量バッテリーの配線など、大きな電流や電力が扱われる様々な機器に使われているノウハウです。
◆電源部の改良
デジタル電源、アナログ電源、プリ電源、スタンバイ用電源の配置を見直し、新型ブロックコンデンサー、ショットキーバリアダイオードの並列化、ワイヤーからバスバーへの変更など、HiFiアンプの理想型を追求、プリ部の電源部は高剛性シャーシに直接マウント。
・ショットキーバリアダイオードの並列化
「PMA-A110」で採用されていたシングルショットキーバリアダイオードを「PMA-3000NE」では並列配置化する事で、低インピ-ダンス化、熱の観点で安定した動作を実現。
◆パワーアンプ/電源部の改良
従来モデルであれば基板はシャーシに固定されて導線で接続されていましたが、「PMA-3000NE」では基板の多層化やバスバー配線、箔厚基板を採用する事によって、アンプ回路・電源・出力端子を強固に固定化、信号経路を最短化して凝縮した結果として、まるで一つのモジュールのような構造体を実現しています。
◆進化したD/Aコンバーター回路
・デノンの理想とするマルチビット方式D/Aコンバーター回路
マルチビットDAC「ES9018K2M」をMONOモードでフルに活用し、1chあたり2個、合計4個使用して「UltraAL32Processing」を最大限効果的に活用。また、各DAC間で誤差が出ない様に回路を構成。そして、I/V変換アンプは増幅の誤差が出ないようにカスコード回路で構成。4DAC/chの並列構成により、出力電流が4倍となりDACの高S/N化と聴感上のパワーを獲得。DAC変更に伴いS/N比を更に向上させるために電源、回路共に新規設計して対応しています。
・DACマスタークロックデザイン
デジタルオーディオは、マスタクロックのジッターの影響を大きく受けますが、DACマスタークロック設計を採用し、超低位相ノイズクリスタルを搭載。DACの近くに発信器を設置し、そのクロックでUSB-DACとFPGAを動作させています。
基板の多層化、低ジッターのクロックバッファーの採用、信号に応じたクロック搭載等、単体での製品にもなり得るクオリティーのD/Aコンバーター回路が搭載されています。
・6層基板の採用
「PMA-A110」の4層基板デジタル基板に対し、「PMA-3000NE」では6層基板の採用で、ショートシグナル化を実現。さらに、一面グランドの層を2層持つことが出来るので、高周波ノイズを出さず、入れない回路を実現しています。
「DCD-A110」で採用している低ジッターのクロックバッファーを採用、より重度の高いクロックをD/AコンバーターICに供給する事が可能に。
・信号に応じたクロック搭載
DSD用クロック1種類、PCM用クロック2種類、合計3種のクロックを搭載
・ポストフィルターの定数を「ES9018K2M」に合わせて最適化。
部品点数を削減。緩やかなロールオフの特性となり、癖の無い音質にも貢献。
・オーディオ用高性能オペアンプの採用
昨今のDENON単体オーディオプレーヤーで採用された高性能オペアンプをD/Aコンバーター回路に採用。これまで以上にD/Aコンバーター機能としての性能を追求。
・ショートシグナル化
部品点数を減らしてD/Aコンバーター回路を1つの基板に集約した引き算の美学。実装面積を広げて大きめの高音質パーツを実装する事に成功しています。
◆サウンドマスター「山内慎一」氏による入念な試聴とサウンドチューニング
・DENONの音質担当エンジニアとサウンドマスターが試作と試聴を繰り返し、多くの候補の中から厳選した高音質パーツを多数採用。
「PMA-SX1-LIMITED」や「PMA-A110」の開発過程においてデノン専用に開発・チューニングされたカスタムコンデンサーなどのカスタムパーツを大幅に採用。サウンドマスターの理想とする「Vivid & Spacious」なサウンドの実現に大きな効果を発揮している。
・音質グレードのコンデンサーの採用、プリ、パワーアンプ段を始めアンプ部にアナログ/デジタル含め全てのブロックでデノンカスタムコンデンサーを採用。
「SY・NE」「PPSC-X」「RFY/YH(カスタムコンデンサー)」
・ワイヤリングもちろん、ビスの素材や長さに至るまで入念なチューニングが施されています。
・デノンカスタム抵抗をはじめ、高音質グレードの抵抗を全面採用。
◆担当者より
1996年に発売された超弩級モノラル・パワーアンプ「POA-S1」(2,000,000円/1台)に搭載された「UHCシングルプッシュプル」回路を30年以上磨き上げ続けて、今ではDENONの伝統とまで言われるパワーアンプ回路に成長しました。「PMA-3000NE」はその集大成と言えるシンプル化の為の様々な改良が加えられている製品と言えます。
今回ご紹介した「PMA-3000NE」は110年のアニバーサリーモデル「PMA-110」を進化させた製品で、高品質パーツの大幅採用や、細部に至るまでの入念なチューニングが施されて誕生したハイエンドプリメインアンプです。
サウンドマスターである「山内慎一」氏が、音質に関わるパーツを徹底的に吟味し、アナログオーディオ回路に使用される最高級のPPSC-Xコンデンサーを始め、グレードアップされたオペアンプやカーボン被膜抵抗、メルフ抵抗、導電性高分子コンデンサーなどの高品位なパーツを随所に用いてサウンドチューニングを施すことにより、そのパフォーマンスを飛躍的に向上させています。
私が「PMA-3000NE」で最も注目する点は内部配線が導体ケーブルから肉厚純銅製「バスバー」に変更されている点で、電源トランス周り以外にはケーブルレスをほぼ実現しています。回路の多層化や配置の改良も加わって、アンプの内部は今まで見たことが無いレベルで、ケーブル類の少ないスッキリとした構造を実現しており、間違いなく音質にも好影響が期待出来ます。
サウンドはDENONが目指す「Vivid & Spacious」サウンドを見事に体現しており、DENONらしい高い駆動力による豊かなスケール感は勿論、軽快なリズム感の表現にも優れており、魅力的なサウンドを聴かせてくれます。
※「Vivid & Spacious」サウンドとは:鮮明な・・躍動的な・・はつらつとした・・目の覚めるような・・広々とした・・ゆったりとした・・
※東京インターナショナルオーディオショウ2024にて試聴
「PMA-3000NE」はRCAライン入力の音質が格段に向上しているのはもちろん!!
フォノイコライザー回路やD/Aコンバーター回路も大きく進化しており、いずれも質感高く再生出来る事を考えると、総合的な魅力度の高い製品と言えるプリメインアンプです!!