[ 2025年 1月 21日付 ]
ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
中電の人気カートリッジ「MGシリーズ」に、ボロンカンチレバーにPH針を搭載した「MG-36BPH」と、モノラル専用モデル「MG-36MN1」が追加発売されました。
全てボディー部分は共通となるので、針先の交換だけで様々なグレードやレコードに対応するアナログシステムを構築することができます!
◆まずは、注目のボロンカンチレバー+ラインコンタクトスタイラスの「MG-36BPH」をご紹介
「MG-36BPH」の開発には、実に3年以上の年月をかけているとのことです。無垢のラインコンタクトは、オグラ宝石精機工業のPH針が採用されています。
アルミカンチレバーやシバタ針など色々と試した結果、ボロンカンチレバー+無垢のPH針が採用されています。
元々「MG-36シリーズ」は「高音質で繊細でクリアーな音」というより、「パンチがあって押し出しが強く、音楽が楽しい、聴いていて体がスイングしてしまう音」を目指して製作されています。
最終的に、カンチレバーの素材にはボロンを採用。低密度、高ヤング率、音の伝送速度はアルミの2.6倍という素材で、アルミよりも正確に音溝の情報を拾い出すことができます。ボロンは素材がもつ固有の音色感も少なく、極めて高品位なサウンドを実現できます。
※カンチレバーとしてはダイヤモンドに次ぐ硬度の高い素材です。
そのため、繊細さが特徴のラインコンタクト針(シバタ針)では音がやせてしまうのではないか?という問題がありました。より繊細に詳細にレコードの音溝をトレースするためには、カンチレバー全体の質量を小さくすることも必要です。さらに、出力を上げるために安易に大きなマグネットを使うことはできません。せっかく、先端のダイヤチップの質量が下がっても、後端のマグネットが重くてはバランスが取れなくなってしまうからです。
カンチレバーの材質、マグネットのサイズ、ダンパーの選択などの様々な組みあわせを悩みながら検証した結果、やっと「MG-36シリーズ」の名に恥じない強さを持っていて、且つ、繊細さを併せ持つカートリッジが完成しております。
今までの「MG-36シリーズ」と比べるとかなり高価な製品となっておりますが、使えば納得できる高音質な製品です。もちろん、「MG-36シリーズ」は全モデルのボディ共通です。「MG-3605」「MG-3675」をお持ちの方は、交換針「CN-36BPH」を購入して、針交換すれば、ボロンカンチレバー+PH針の高音質を楽しめます。
※「MG-36BPH」は量産できないため、一旦品切れすると納期がかかる場合がございます。
◆まずは、中電「MG-36シリーズ」をおさらいしてみます。
材料・部品・組立・調整・検査・出荷まで、完全日本産、安心のMade in Japanレコードカートリッジです。手の届く価格ながらも、我慢することなく音楽が楽しめる魔法のカートリッジなんです。丸針の「MG-3605」と、楕円針の「MG-3675」の2種類が発売されていました。
JAZZ用として愛用者の多かったシュアーがカートリッジの生産を終了して、代わりのカートリッジを探していた方に絶賛いただいております。特に「M-44G」を愛用していた方には、よりパワフルな「MG-3605」が人気となりました。上位モデルとなる「MG-3675」はボディーが共通のため、交換針の「CN-3675」を購入するだけで使い分けができる魅力があります。
◆丸針「MG-3605」の試聴レポート
針先は丸針で、出力はなんと9.5mVという超高出力を誇り、圧倒的なパワフルサウンドが特徴です。音質の傾向はMMらしく、明るく張りのあるサウンドで、音像は標準的なカートリッジよりも確実に1歩前に出てくる感じです。
これだけ聴くと、シュアーの「M-44G」みたいな感じかと思われるかもしれませんが、遥かに高い音楽性を感じます。
このカートリッジの凄いところは、楽器やボーカルの音像が高級カートリッジ並みにしっかりと表現できているところで、健康的な明るさとあいまって、聴いていて気持ちよさすら感じさせてくれます。しっかりとチューニングされた安心感があり、安物を聴いている感じは全くありません。
※出力が通常MM型の倍近くありますので、標準的なカートリッジから変更される際はボリューム調整にご注意くださいね。
針形状:結合ダイヤ丸針(0.6ミル)
カンチレバー:アルミ
出力電圧:9.5mV/1KHz(5cm/s)
周波数特性:20~18KHz
セパレーション:23dB以上
推奨針圧:3.5g
◆楕円針の「MG-3675」の試聴レポート
針先は楕円針で、こちらの出力は7.5mV。針圧も2.5g(MG-3605は3.5g)と少し控えめとなっています。
基本的には明るくパワフルな傾向ですが、音質傾向は少し控えめで、帯域バランスが整ったチューニングが施されている感じです。「MG-3605」より音場は澄んでおり、落ち着いた質感で、より広い音楽に対応できる上級機種といえます。クラシックもそれなりに楽しめるし、JAZZやPOPSのバラード系にはこちらがお勧めです。
両モデルともボディーは共通なので、交換針を買えば2個の超コストパフォーマンスのカートリッジを所有しているのと同様の楽しみ方ができます。(重さは同じなので、針圧の差1.0g分のウエイト調整が必要です)
もちろん、高級MCカートリッジのような、超高S/N、しっとりと滑らかなシルキーサウンドではなく、音楽を楽しめる明るく健康的なハイファイサウンドとなります。
針形状:結合ダイヤ楕円針(0.3x0.7ミル)
カンチレバー:アルミ
出力電圧:7.5mV/1KHz(5cm/s)
周波数特性:20~20KHz
セパレーション:25dB以上
推奨針圧:2.5g
◆早速、新製品を聴いてみましょう。
ボロンカンチレバー+ラインコンタクトスタイラスの「MG-36BPH」の試聴レポート
楕円針の「MG-3675」から交換針だけ変更して試聴。
※針圧は2.5g→2.25gが標準なので、0.25gウエイトを軽くしました。
一聴して音の立ち上がりの良さを感じます。音の消え入る様もリニアで、聴感上のSN感が大幅に改善されています。伸びやかな高域と引き締まった低域が魅力的で、中音域の艶やかさや、澄んだ音場の表現を聴くと何とも心地よく聞き入ってしまいました。どの帯域も決して出しゃばることがないフラットな帯域特性と思いますが、音には実在感が有り、相当な実力の高さを感じます。
「MG-3605」「MBー3675」が「M-44G」からの乗り換えにお勧めとすれば・・・「MG-36BPH」はベリリウムカンチレバーの「V-15Type5」に近いかもしれませんね。
最近のMCカートリッジはどのブランドも高級志向で新製品は数十万円~100万円クラスばかりで全く手が届きません。「ながら聴き」も多い筆者としては全く高嶺の花でしたが、「MG-36BPH」は現実的なお値段で、満足度の高い製品として、めちゃめちゃ魅力的と思いました。すでに「MG-36」シリーズをお持ちの方には、交換針の「CN-36BPH」をお勧めいたします。
やはり、MCカートリッジを使うには「昇圧トランス」か「フォノイコライザー」もそれなりのグレードが必要となります。「MG-36」シリーズは出力が高いためアンプの負担が少なく、アンプ内蔵のフォノイコライザーでも十分楽しめる点を考えると、超ハイコスパカートリッジといえます。
針先:無垢ダイヤ ラインコンタクト針(PH)
カンチレバー:ボロン
出力電圧:4.0~5.0mV/1KHz(5cm/s)
周波数特性:20~20KHz
セパレーション:23dB以上
推奨針圧:2.0~2.5g
◆続いて、同時発売されたモノカートリッジ「MG-36 Mono 1mil(MG-36MN1)」をご紹介いたします。
「MG-36 Mono 1mil(MG-36MN1)」の試聴レポート
「MG-36MN1」も交換針の交換だけですぐに楽しめます。針圧は標準が3.0gとなるので針圧は調整が必要です。
音質は「MG-3605」と共通する部分が多いのですが、音はもっと太く厚みのある音がします。中央のエネルギー感/密度感が嬉しく、やっぱりモノラルLPにはモノラルカートリッジが必需品と感じました。
本体はステレオのままなので、アンプ側にモノポジションがある場合は切り替えてお聴きください。バランスコントロールで片チャネルだけ鳴らしても良いし、そのまま2本のスピーカーで聴いても問題はありません。
針先:結合ダイヤ丸1ミル
カンチレバー:アルミ
出力電圧:6.5~7.5mV/1KHz(5cm/s)
周波数特性:20~18KHz
推奨針圧:2.5~3.5g
◆担当者より
今回は試せませんでしたが、SPレコード用の交換針も同時発売(発表)されています。
同時発売のSPレコード針「MG-36SP3」は、チップの太さが3ミルで、針圧は6.0~10.0g。より太いチップが搭載される「3.5ミル」「4.0ミル」のSP針も順次発売予定となっています。
針の太さの違う3種類のSPレコード針は、3モデルとも音が異なるとのことなので揃いましたら、改めてレポートいたします。カンチレバーや針が太くなると更に音も太くなると思われるので楽しみです!
また、標準的なSPカートリッジで溝が削れてしまったSP盤でも、太い針なら再生出来る可能性があるとのことです。
※SPレコードの素材(シェラック)はLPレコードと比べて、堅く柔軟性がないため、再生すると溝が削れてしまい寿命があるといわれています。
中電は「世界の人に音楽を!」のキャッチフレーズで、非常にコストパフォーマンスの高い製品を発売しています。【Made in Japan】ならではの高品質で、安心して使うことができるカートリッジとして、お勧めいたします。
余談ではありますが、「MG-36」シリーズのボディーは他社のカートリッジと比べると、半分程度の大きさしかありません。メーカーに聞いたところによると、コンパクトにすることで剛性のアップや、共振、鳴きを抑制するための設計とのことです。下記写真はシュアー「M-44G」(写真上)と「MG-36」(写真下)のボディーを並べたモノです。なるほどですね。