[ 2026年 7月 14日付 ]
ハイエンドオーディオ担当の "ichinose" です。
高音質ソフトといえば「SACD」や「MQA-CD」を思い浮かべる方が多いと思いますが、通常のCDプレーヤーで再生できる高音質CDに関しては、あまり意識されていない方がいらっしゃるようなので、今回まとめてみました。
「SACD」は対応のプレーヤーが必要ですし、ソフトはクラシックがほとんど(タイトルの8割がクラシックです)で、JAZZやPOPS系はごく一部に限定されており、クラシック愛聴家の方以外にはあまり恩恵がありませんね。
最近では配信に多く採用されており、大手レーベルによる一般的な新譜の「SACD」リリースは激減しています。
「MQA-CD」に関してもデコーダーが対応していないと、通常のCDとしてしか再生ができません。残念ながら配信の停止などもあり、終息傾向となってしまっており、将来性はほぼないと思われます。(本当に残念です…)
※2024年7月までは配信の大手「TIDAL」がMQAを配信していましたが、完全終了してしまいました。
MQAの開発チームは経営の紆余曲折などもあり、現在は「Bluetooth」などのワイヤレス伝送を高音質化する新技術「AIRIA(旧名:SCL6)」へシフトしています。
そんな中、安定供給されているのが高音質CDで、各レーベルが独自の方式で発売されており、通常のCDプレーヤーで再生できる「CD-DA規格」に準拠しており、価格も普通のCDと変わらない方式なので、人気を集めています。
◆「Blu-spec CD2」
ソニー・ミュージックエンタテインメントが開発した高品質CD規格。
※実はかなり以前の2012年12月から登場しています。
「Blu-ray Disc」の製造技術を100%投入して作られた高品質CD規格。
従来のCDとデジタルデータ自体は全く同じ(CD-DA規格・16bit/44.1kHz)ですが、製造プロセスの精度を極限まで高めることで、再生時の音質劣化を抑えています。
その核心となる4つの主要技術は以下の通りです。
1. シリコンウエハー原盤の採用
従来のCD製造ではガラス原盤が使用されていましたが、「Blu-spec CD2」では半導体製造用のシリコンウエハーを原盤材料に採用しています。これにより、原盤表面のザラつき(粗さ)が従来の約6分の1に激減し、極めて滑らかで欠陥のないカッティング環境を実現しました。
2. 超高精度BD用カッティングマシンの導入
ブルーレイディスク(BD)用の超微細露光が可能なカッティングマシンをそのまま使用しています。トラックピッチ(溝の間隔)精度:従来の約20倍に向上。レーザービームの照射位置精度:従来の約10倍に向上。これにより、CDサイズに刻まれるピット(音情報を表す凹凸)の並びが驚異的な精度でコントロールされます。
3. 金属酸化物レジストによる熱記録(Phase Transition Mastering)
原盤の記録層(レジスト)を、従来の「フォトレジスト(光記録)」から、BD用の「金属酸化物レジスト(熱記録)」へと変更。光による化学変化ではなく、正確な熱コントロールによってピットを焼き切るため、理想的な形状のピット(くぼみ)を形成。音質劣化の最大の原因となるジッター(時間軸のブレ)量が約2分の1に低減。
4. 高分子ポリカーボネート樹脂のディスク素材
プレスされたディスクのベース素材には、BD用に開発された極めて透明度が高く、光学的特性に優れた高分子ポリカーボネートを使用。CDプレーヤーから照射される読み取りレーザーの乱反射を防ぎ、信号を極めて正確にピックアップ可能に。
◆「SHM-CD」
ユニバーサルミュージックとJVC(日本ビクター)が共同開発した高音質CD規格です。「SHM-CD」=(スーパー・ハイ・マテリアル-コンパクト・ディスク)
※2007年に登場。
1. 素材の極限化技術
通常のCDよりも圧倒的に透明度が高く、流動性に優れた「液晶パネル用ポリカーボネート樹脂」をディスク素材に採用することで読み取りレーザーの乱反射を抑え、正確な信号ピックアップを可能にしています。
2. 歪みが少なく、マイルドで自然なアナログライクの滑らかなサウンドを実現しています。
◆「HQCD」「UHQCD(アルティメット・ハイクオリティCD)」
メモリーテックが開発した規格です。
※「HQCD」2008年頃に登場、「UHQCD」2015年に登場
初代の「HQCD」を進化させた現行の「UHQCD」は「究極の高品質CD」として、現在「Blu-spec CD2」や「SHM-CD」と並ぶ非常に人気の高い規格です。
1. 液体フォトポリマーを採用
従来のプラスチックを型に流し込む方法ではなく、液晶の製造などに使われる「フォトポリマー(光硬化樹脂)」を液体の状態で細かい溝(ピット)に流し込み、光で固める新製法を採用。これにより、原盤を完璧に再現可能に、これまでの技術では潰れてしまいがちだった微細な凸凹(デジタル信号)の角まで完璧に型取りできるようになりました。
2. さらなる高反射率の実現
反射膜にも、より高性能な特殊合金を採用する事により「HQCD」を上回る圧倒的なデータ読み取り精度を実現。
◆「Gold CD(24K Gold CD)」
反射膜に純金を使用し、経年劣化の防止とレーザーの読み取り精度を高めた高音質盤。
高価な24金を使用するため価格が高くなってしまうためか、日本国内ではあまり普及しませんでしたが、「Mobile Fidelity」や「Audio Fidelity」などの海外の高品位レーベルで限定発売されていました。
※筆者は「Mobile Fidelity」ファンで、かなりの枚数のJAZZをコレクションしています。
現在では「Mobile Fidelity」はSACDやアナログディスクに移行しておりCDソフトの発売は終了してしまいました。
◆ 担当者より
今回ご紹介した高音質CDはいずれも、通常のCDと同じ情報量の音楽データが使われています。
新しいデーターが入っているわけではありませんが、明らかに音質は異なります。
その最大の理由は、CDプレーヤーのデーター補正回路の動作を最小限に抑える事が出来るためです。
CDプレーヤーがデータを読み取る際の「迷光」や「読み取りエラー(ジッター)」を様々な方法で排除することで、オーディオ機器内のエラー訂正回路や電源への負荷を減らし、結果として音の解像度、定位感、クリアさといった「原音のニュアンス」を100%引き出すというアプローチをとっています。
この信号読み取りのエラーが音質に与える影響は想像以上で、高品質ディスクであればプレーヤー内部のエラー訂正回路(補正処理)の動作が少なく済むため、オーディオ機器への電気的負荷が減り、結果として以下の音質が期待できます。
1. 解像度の向上:今まで聴こえなかった細かい楽器の残響音が聴こえる。
2. S/N比の向上:音が鳴っていない「静寂」がより深く感じられる。
3. 低域の安定:ボヤけがちだったベースやバスドラムの音が引き締まる。
※もちろん、いくら高音質CD規格といっても、マスターの品質が良くなければ効果は期待できません。高音質CDとして発売されているディスクでも、輸入盤の普通のCDの方が音が良かった経験も結構あり、万能とはいえない場合もあります…。







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