フランスの歌姫サンドリーヌ・ピオーとピアニストのダヴィッド・カドゥシュによる、前作『私的な旅』に続く二部作の完結編。今回のテーマは<おとぎ話(お話)>ですが、ここに描かれるのは単なる子供向けの夢物語ではありません。優しく、どこか懐かしい音楽の裏側には、幼少期の不安や人間が抱く根源的な恐れ、甘くも苦いノスタルジーといった影が潜んでいます。ドビュッシーやラヴェル、プーランクといった巨匠の名曲から、ジャンヌ・ベルナール、ルイーズ・ディディエなど歴史に埋もれた女性作曲家たちの貴重な作品までを幅広く収録。ツェムリンスキーの恐ろしいながらも美しい子守歌(眠りの歌)や、ホロコーストの犠牲になったイルゼ・ウェーバーが我が子のために遺した祈りの旋律など、1曲1曲が心の奥深くへと語りかけます。激しい葛藤をぶつけるのではなく、まるで母親が囁くような、限りなく柔らかく澄んだ歌声とピアノの響きが、秘められた悲しみや記憶を静かに包み込みます。美しさと深い影が共存する、大人にこそ聴いてほしい一枚です。 (C)RS