性能の極限に迫る!! Accuphase『 E-380 』が登場!!2019.11.28 こんにちは、ハイエンドオーディオ担当の "あさやん" です。 Accuphaseから4年ぶりとなる、同社のプリメイン中核機でもある《 300番台 》の最新鋭機『 E-380 』が登場。前作の「E-370」はプリメインとしての性能の高さは勿論、その信頼性においても、このクラスのハイエンドプリメインとしては圧倒的な人気を獲得しました。そんな完成度の高い「E-370」に、さらにどのように改良の手を加えたのか、興味津々です。 ■Accuphase 300番台とは最新鋭機『 E-380 』をご説明する前に、Accuphaseのメインストリーム《 300番台 》の歴史に少し触れておきましょう。300番台のプリメインアンプのルーツは、バブル真っ只中の1987年12月まで遡ります。当時はオーディオ業界もピークを迎え、バブルに沸いていた時代でした。 その後、3~4年おきにモデルチェンジを重ねつつ、確実に進化を遂げ、いずれも人気を博して来ました。 「E-305」(1987.12)→「E-305V」(1991.11)→「E-306」(1994.12)→「E-306V」(1997.12)→「E-307」(2000.12)→「E-308」(2004.04)→「E-350」(2007.11)→「E-360」(2011.11)→「E-370」(2015.11)」と変遷し、今回の『 E-380 』が記念すべき10世代目となります。 「まだ何をすることがあったのか?」「何が出来るのか?」ほとんどのオーディオマニアの方は、疑問に思われることでしょう。かく言う私自身もそうでした。実際に『 E-380 』の音を聴くまでは・・・。 ■いきなり、核心に迫る『 E-380 』を詳しく見ていく前に、先に結論をバラしてしまいますと、前作「E-370」とサイズ的には全く同じで、重量も僅か100gアップの22.8kgです。しかし、パワーは20%もアップ(180W/4Ω、120W/8Ω)したのです。 従来の感覚では、プリメインアンプの筐体サイズとパワーには正比例とは言わないまでも、確かに相関関係はあると感じていました。実際Accuphaseもそう考えていたようです。 開発当初それは容易ではなく、試行錯誤を繰り返した末に辿り着いたのが、電源部や電力増幅段の強化で、それが実を結んだのです。たかが20Wですが、されど20W。実際出てくる音は確かに違いました。「E-370」との比較試聴結果は最後にございます。 それでは、Accuphaseが『E-380』に注入した独自技術を、4項目に分けて、ご説明いたします。 ■1.《 AAVA(Accuphase Analog Vari-gain Amplifier)方式ボリューム・コントロール 》の採用あえて「Analog」を入れているのは、デジタル・ボリュームと違うことを強調したかったからだと思います。 抵抗体を使う一般的なボリュームと違うため、ちょっと見、デジタルボリュームではないか。まして、リモコンでボリューム調整ができるのですから当然です。 しかし、《 AAVA 》は違います。 音楽信号(電圧信号)を16種類の電流信号に変換(重み付け)し、この中からボリュームの位置に応じて最適な組み合わせを選択。この選択した電流信号を1本の電流信号に合成して、再度電圧に戻すのです。《 AAVA 》基板の上位の電流信号を扱う部分(VIアンプ)に改良を加え、全体のインピーダンスを1/2に下げて低インピーダンス化を図りました。 これによって何がどう違うのでしょう。 デジタル・ボリュームは音楽信号を一旦デジタル信号に変換して音量調整するため、どうしてもデジタル特有のノイズを回避できず、クールで痩せぎすのサウンドであったり、味わいのない無機的な音というのがマニア共通の認識で、多かれ少なかれ体感されたことだと思います。 一方、一般的なアナログ・ボリュームは、入力信号を可変抵抗器(いわゆるボリューム)や固定抵抗器の組合せで一旦減衰させた後、固定ゲインのアンプで増幅して音量を変化させています。そのため、抵抗体を通ることでノイズが多くなり、回転角度で異なる性能となってしまうのです。結果、S/N比や歪率の低下を招くとともに、可変抵抗器の接点が常に空気に触れていることで経年変化が起こり、よく経験するガリを発生させてしまうのです。信頼性に難ありです。 このように《 AAVA方式ボリューム・コントロール 》はデジタルのようでアナログであり、しかも可変抵抗器を使わない画期的なボリュームなのです。このため、ボリューム位置により周波数特性が変わることがなく、音質変化もありません。また、アンプのゲインで音量を直接調整するため、高S/N比、低歪を実現でき、しかも回路全てが電子部品でできているため、長期にわたって信頼性が非常に高いのです。 ボリュームノブの感触も高級機のそれと同様の滑らかさで適度な粘性もあります。さらに《 AAVA 》のメリットとしては、可変抵抗器ではないため左右の音量バランスが正確であり、左右のチャンネルが独立した回路となるためクロストークがなく、チャンネル・セパレーションも大きく取れています。バランスコントロールやアッテネーター機能は《 AAVA 》で行うため、音楽信号が余分な回路を経由することがなく高音質に結びつくのです。 《 AAVA 》はAccuphaseの最上位のプリアンプ「C3850」をはじめ、全てのプリアンプ、プリメインアンプに採用されており、同社製品への信頼性がさらに高まったのです。特に『 E-380 』では、前作の「E-370」から回路の見直しによる低インピーダンス化や高精度な薄膜抵抗を多く採用することで、定格出力時のS/N比が2dB改善できたとのことです。 ■2.電力増幅段と電源部の強化で定格出力がアップ出力素子は前作と同じバイポーラ・トランジスターによる2パラレル・プッシュプルなのですが、『 E-380 』ではヒートシンクを大型化し、放熱効率を上げ、電源部の電源トランスを新開発の大容量EI型トランスにして強化しています。 さらに、電解コンデンサーを本機のために開発したカスタム仕様の大容量コンデンサーとし、容量を前作の30,000μFから33,000μFに10%大容量化することで、「E-370」と同サイズでありながら出力の20%アップを達成したのです。 歴代の《 300番台 》の定格出力が100W/8Ωであったのに対し、その殻をついに破って120W/8Ωとしたのです。これは数字以上に大きなことです。 ■3.ダンピングファクターもアップダンピングファクター(DF)は、スピーカーの逆起電力を吸収して、スピーカーをコントロールする能力示す指標ですが、前作の「E-370」に比べ25%も向上し、実にDF:500を達成したのです。 このクラスのプリメインアンプではちょっと見掛けない数字で、《 300番台 》の初代機「E-305」でDF:100、「E-350」でもDF:120でしたから、その差は圧倒的です。これはプロテクション回路に、一般的なリレーに代えて使われている「MOS-FETスイッチ」を、最上位のパワーアンプ「A-250」と同じ部品にすることや、基板パターンをより太く短くすることで実現できたとのことです。 ■4.その他の進化点「MOS-FETスイッチ」を使った保護回路は、配線をなくしスピーカー端子と直結されており、リレーのような機械的接点がなく、劣化などの経年変化がないため信頼性の高いものです。 しかも、定格電流が160Aと非常に大きく、ON抵抗(通過時の抵抗)が0.002Ω(E-370は0.0026Ω)と低くなり、音質の劣化も防いでいます。そして、スピーカー端子がショートされた時やパワートランジスターが異常発熱した場合、スピーカー出力をOFFし、メーターランプを点滅させて知らせてくれます。 音質には直接関係のない改良ですが、大型のパワーメーターの目盛りを-50dB(従来-40dB)まで増やすことで、小音量時でもパワーが視認できるようになりました。 また、リアパネルのオプションボード増設スロットにデジタル入力ボード「DAC-50」を使用した場合のサンプリング周波数の表示が、PCMで384kHz(前作192kHz)まで、新たにDSDも11.2MHzまで対応しています。 ■ 試聴しましたこのように過去9世代にわたって改良を積み重ねてきて、まだやることがあるのかと当初大いに疑問でした。その上で、新しく注入した独自技術の数々を技術者に説明していただいても、なお「本当に良くなっているの?」という疑問はなかなか消えませんでした。 今回、『 E-380 』を前作「E-370」と比較しながら試聴しました。スピーカーは、B&W「805D3」を使用しました。 ![]() 「E-370」での音は、当webサイト専用試聴室でのリファレンスアンプでもあり聴き慣れた音で、安定したまさにAccuphaseの音で、特に不満を感じることもありませんでした。 しかし、『 E-380 』に変えた瞬間サウンドが一変したのです。 透明感が上がり、「E-370」でほんの少し感じた色付けもなくなり、生の音のような滑らかな清々しいサウンドが広がったのです。音の粒子が細かくなり、高音域の僅かなディテールも感じられるようになりました。 低域方向への伸びも顕著で立ち上がりや締まりが良くなり、厚みが加わり雄大で落ち着いたサウンドです。これは、ダンピングファクターが効いているように感じました。 S/Nが良くなったためか響きが豊かになり、小音量時に少し感じた、くすみや歪み感が消えていました。このためボリュームを上げていってもうるささは感じなくなっています。 女性ボーカルもリアルで顔の表情まで感じられる位でした。しっとりと落ち着いた魅力的なもので、いつまでも聴いていたくなりました。 これはハッキリ言って別のアンプであり、間違いなく1ランク以上グレードが上がったと感じました。性能の極限に挑戦したAccuphaseの技術陣の凄さを改めて感じます。とにかく、このクラスのアンプとしての完成度の高さは海外製を含めダントツだと思います。 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。(あさやん) この記事を書いた人
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