
エアコンの電気代はいくら?計算方法や節約方法を紹介
2025.3.24[更新]
エアコンは冷房にも暖房にも使え、快適な暮らしに欠かせない家電です。しかし、夏場も冬場も⾧時間使用するため、電気代がどれくらいかかるのか気になるところ。本記事では、エアコンの冷房・暖房・除湿の仕組みや、1時間あたり・1年間あたりの電気代の目安のほか、電気代を節約するコツについて解説します。

Joshin web 家電担当者「K」が、エアコンの電気代の計算方法や節約方法をご紹介いたします!
エアコンの冷暖房と除湿の仕組み
エアコンは、運転モードによって温度・湿度を調整する仕組みが異なり、電気代もそれぞれのモードで変わってきます。まずは、冷房運転、暖房運転、除湿運転の仕組みについて見ていきましょう。
冷房の仕組み:部屋の中の熱を屋外に放出する
一般的なエアコンは室内機と室外機がセットになっており、この2つをつなぐパイプの中を、空気の中にある熱を運ぶ「冷媒」というガスが循環しています。エアコンの冷房運転は、冷媒を使って部屋の中の熱を屋外に放出することで、部屋を冷やす仕組みです。
冷房運転を始めると、まず部屋の中の暖かい空気が室内機に取り込まれ、熱交換器で熱だけを冷媒にのせて、冷たくなった風を吹き出します。熱をのせた冷媒は室外機へと送られ、熱交換器が冷媒から熱を取り出し、ファンの風によって外に熱を放出します。その後、熱を失った冷媒は室内機に送られ、再び部屋の中の暖かい空気から熱を奪って、冷たい風を吹き出すのです。このプロセスを繰り返すことで、室内が涼しくなっていきます。

暖房の仕組み:屋外の熱を部屋の中に取り込む
エアコンの暖房は、冷房とは反対に、屋外の熱を部屋の中に取り込むことで部屋を暖める仕組みです。暖房運転を始めると、まず室外機が外の空気を取り込み、熱交換器で空気から熱を取り出して冷媒にのせます。次に、冷媒は圧縮機で圧力をかけられて高温になります。その後、高温になった冷媒は室内機に送られて、熱交換器で空気に熱を与えて暖かい風に変え、室内に吹き出すのです。
熱を失った冷媒は、パイプを通って室外機に戻ります。続いて、減圧機で圧力を下げられ、外気温よりも冷たくなった冷媒は、熱交換器で屋外の空気から熱を奪います。こうして熱をのせた冷媒を、再び圧縮機を通すことで高温にして、室内機へと送るのです。暖房は、このプロセスを繰り返すことで部屋を暖めていきます。

除湿の仕組み:空気を冷やして水分を取り出す
エアコンの除湿は、部屋の温度を下げることではなく、湿度を下げることに重きを置いた機能です。除湿運転を開始すると、まず部屋の中の湿った空気を室内機に取り込み、その空気を熱交換器で急激に冷やします。すると、空気に含まれる水分が結露して、水滴となって熱交換器に付着し、水分を失った冷えた空気が部屋に戻される仕組みです。結露した水滴は、ドレンホースを伝って室外へと排出されます。
なお、除湿には「弱冷房除湿」と「再加熱除湿」の2種類があります。弱冷房除湿は、弱めの冷房のようなもので、除湿を行うことで温度も少し下がります。一方、再加熱除湿は、除湿した空気を再び暖めることで、温度を下げずに除湿を行う機能です。夏場など気温が高い時期には弱冷房除湿が快適ですが、湿度が高くても気温が低い梅雨の時期などには、再加熱除湿がピッタリでしょう。

エアコンの冷房・暖房・除湿で電気代が高いのは?
エアコンは、室内と屋外の熱を交換することで部屋の温度を調節しています。そのため、外気温とエアコンの設定温度の差が大きくなるほど、稼働に必要なエネルギーが増え、電気代も高くなります。ここでは、エアコンの冷房・暖房・除湿で、電気代にどのような違いがあるのか見ていきましょう。
冷房と暖房の電気代
冷房と暖房では、暖房のほうが電気代は高くなる傾向があります。これは、外気温と設定温度の差が大きくなりやすいためです。例えば、外気温が33℃で冷房の設定温度を27℃にすると温度差は6℃ですが、外気温が0℃で暖房の設定温度を20℃にすると温度差は20℃になり、冷房の3倍以上の差があります。
冷房と除湿の電気代
冷房と除湿では、一般的に除湿(弱冷房除湿)のほうが電気代は安くなります。ただし、空気を再加熱してから室内に戻す再加熱除湿の場合は、冷房よりも電気代が高くなることがあります。
エアコンの電気代の計算方法
エアコンの電気代は、運転時間や設定温度のほか、電気会社との契約内容などによって変化します。エアコンの電気代を計算する前に、まずは製品カタログなどで、お使いのエアコンの消費電力を調べておきましょう。
1 時間あたりのエアコンの電気代の目安
エアコンの電気代は、下記の計算式で求めることができます。
<エアコンの電気代の計算式>
エアコンの電気代=エアコンの消費電力(kW)×電力料金単価(円/kWh)×運転時間(h)
エアコンの消費電力は、一般的に冷房より暖房のほうが大きくなります。また、運転環境によっても異なり、室内温度と設定温度の差が大きいほど消費電力は増えます。エアコンのカタログには「105~920W」のように最小~最大の消費電力や、「定格消費電力」(JIS 規格にもとづいた条件下で、連続して使用した場合の消費電力)が記載されているので、これらの数字を確認しましょう。
例えば、冷房時の最小消費電力が110W、最大消費電力が900W、定格消費電力が430Wのエアコンを1時間冷房運転した場合の電気代の目安は、下記のように計算できます。
<1時間あたりのエアコンの目安電気代>
・最小 : 0.11kW(110W÷1,000)×31円×1時間=3.41円
・最大 : 0.90kW(900W÷1,000)×31円×1時間=27.9円
・定格 : 0.43kW(430W÷1,000)×31円×1時間=13.33円
なお、電力料金単価は、利用している電力会社や契約内容によって異なります。ここでは、公益社団法人全国家庭電気製品公正取引協議会が定めている目安単価の、31円/kWh(税込)を使って計算しました。
1年間のエアコンの電気代の目安
1年間のエアコンの電気代は、下記の計算式で求めることができます。
<1年間のエアコンの電気代を求める計算式>
1年間のエアコンの電気代=年間消費電力量(kWh)×電力料金単価(円/kWh)
年間消費電力量の目安は、エアコンの説明書やカタログに「期間消費電力量」として記載されています。これは、一年を通じてエアコンを使用した場合の消費電力量を表したものです。
例えば、期間消費電力量が640kWhのエアコンの場合、1年間の電気代の目安は下記のようになります。
<1年間のエアコンの電気代の目安>
640kWh×31円=19,840円
エアコンの電気代を節約するコツ
エアコンの電気代を節約するには、冷暖房の邪魔になるものを置かない、設定温度を室温に近づける、ほかの冷暖房器具を併用するなど、いくつかの方法があります。ここでは、おすすめの節約法を9つご紹介します。
フィルターの掃除をする
エアコンのフィルターは、2週間に1度を目安に掃除すると電気代の節約になります。室内の空気にはほこりなどが含まれているため、エアコンを使い続けるとフィルターにほこりが溜まって、目詰まりします。フィルターが目詰まりすると冷暖房の効率が低下し、部屋を冷やしたり暖めたりするのに余計な電力が必要になってしまうのです。
経済産業省資源エネルギー庁の「家庭向け省エネ関連情報無理のない省エネ節約」によると、フィルターが目詰まりしているエアコン(2.2kW)とフィルターを清掃したエアコンでは、清掃したエアコンのほうが年間で31.95kWh、金額にして約990円の電気代を節約できるといいます。また、フィルターの定期清掃には、エアコン内部のカビの増殖を抑えたり、嫌なにおいを防止したりする効果もあるので、忘れずに行いましょう。

室外機の吹出口をふさがない
エアコンを効率良く動かして電気代を節約するためには、室外機の前に物を置かず、空気の通り道をふさがないことが重要です。吹出口やその周辺に物があると、放出した熱を再び吸い込んでしまったり、外気を十分に取り込めなかったりして、冷暖房の効率が下がります。室外機の周りには物を置かず、風通しを良くしておきましょう。

室外機は日陰に設置する
エアコンの室外機を日陰に設置すると、エアコンの電気代が節約できます。冷房運転の際、エアコンは室外機から熱を放出しますが、日光にさらされていると周囲の温度が上がり、熱を放出する効率が低下します。エアコンを日陰に設置することで、効率を高めることが可能です。
もしも日陰に設置できない場合は、植木などを使って日陰を作ったり、室外機の上に日よけシートを設置したりといった対策をしましょう。

設定温度を調整する
エアコンの消費電力は、室温と設定温度の差が大きいほど増えるため、必要以上に高いまたは低い温度に設定しないことが大切です。暖房は20℃、冷房は28℃を目安に温度設定を行いましょう。
20℃や28℃では寒い、または暑いと感じる場合は、室内の空気を循環させて温度ムラをなくしたり、湿度を調整したりすることで体感温度を変えることをおすすめします。設定温度を上げたり下げたりする前に、まずはこれらの対策を試してみてください。

風量を自動設定にする
エアコンで冷房を使う際は、風量を自動設定にすると電気代の節約になります。自動設定では、室温と設定温度の差が大きいときは強風、差が小さくなったら微風という具合に、最適な風量で運転してくれます。これにより無駄がなく、効率良く部屋を冷やすことが可能です。
風の向きを調整する
エアコンの風向きを調整すると、空気の循環が良くなり、室内の温度ムラを解消できます。設定温度を変更しなくても快適に感じやすくなり、余計な電力消費を抑えることができるので、風向きの調整は重要です。空気は、暖かいときは上に昇り、冷たいときは下に溜まる性質があります。これを踏まえて、風向きを冷房の際は水平に、暖房の際は下向きに設定しましょう。
サーキュレーターを使う
温度ムラを解消するには、サーキュレーターを利用して室内の空気をかき混ぜるのも効果的です。冷房を使っているときは、エアコンの近くの床にサーキュレーターを置き、背面をエアコンに向け、少し上に向けて風を送ります。これにより、部屋の下に溜まった冷気を部屋全体に循環させることができます。
暖房を使っているときは、エアコンの対角線上にサーキュレーターを設置し、斜め上向きに風を送るといいでしょう。これで、天井付近に溜まった暖かい空気を循環させて、部屋全体を暖めることができます。

カーテンや断熱材などを使う
エアコンの電気代を節約するには、窓などの開口部の断熱性を高めることが重要です。一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会によると、冬の暖房使用時に熱が開口部から流出する割合は約6割、夏の冷房使用時(昼)に熱が開口部から入ってくる割合は約7割だといいます。
具体的な対策としては、窓のカーテンを遮光カーテンに替えたり、内窓を設置したり、窓に断熱シートを貼ったりする方法があります。これらの対策をとることで冷暖房の効率を良くし、電気代を節約することができるでしょう。
※カーテンの測り方&豆知識の記事はこちら

エアコンを買い替える
10年以上同じエアコンを使っている場合は、新しい機種に買い替えることで電気代の節約になる可能性があります。最新のエアコンは省エネ性能に優れており、電気代が安くなる傾向があるからです。経済産業省資源エネルギー庁の「家庭向け省エネ関連情報機器の買換で省エネ節約」によると、2023年型のエアコンは2013年型に比べ、年間の消費電力が134kWh少なく、買い替えによって約15%の省エネになるといいます。古いエアコンを使っている場合は、買い替えも検討してみてください。

エアコンをつけっぱなしにすると電気代は安くなる?
意外かもしれませんが、エアコンのスイッチをこまめに切るよりも、つけっぱなしにしたほうが電気代は安くなる場合があります。エアコンは、起動してから設定温度まで部屋を冷やしたり暖めたりするときに最も消費電力が大きくなります。そのため、短時間の外出であれば、一度スイッチを切って帰宅後にまたスイッチを入れるよりも、つけっぱなしのほうが電気代は安くなるのです。
また、設定温度になったらスイッチを切り、暑さや寒さを感じたら再びスイッチを入れるよりも、スイッチを入れたまま自動運転にしておくほうが省エネになる場合があります。

エアコンの電気代の仕組みを理解して節約しよう
エアコンの電気代を節約するためには、どんなときに消費電力が大きくなるのかを理解し、省エネで快適に過ごせる工夫をすることがポイントです。定期的なフィルター掃除や風向きの調整のほか、遮光カーテン・断熱材の使用などは冷暖房効率に大きな影響を与えるので、忘れずに対策を行いましょう。
これらの対策をしっかり行えば、暖房は20℃、冷房は28℃の設定でも十分に快適に過ごせます。設定温度を必要以上に上げたり下げたりしないことが電気代の節約につながりますので、ぜひ実践してみてください。