
エアコンの適切な設定温度は?体感温度の調節法や節電のポイント
2025.3.24[更新]
夏の暑い日でも冬の寒い日でも、部屋の温度を快適に保ってくれるエアコン。しかし、設定温度が高すぎたり低すぎたりすると、消費電力に大きく影響して電気代が高くなるほか、健康に影響を及ぼすこともあります。 今回は、エアコンの適切な設定温度や体感温度の調節方法のほか、節電につながるポイントについてご紹介します。

Joshin web 家電担当者「K」が、エアコンの設定温度や節電のポイントなどをご紹介!
エアコンの設定温度は何℃が適切?
SDGs の浸透や電気代の上昇に伴い、家庭でのエネルギーの使い方についても見直されつつあります。では、エアコンは何℃に設定すれば省エネになるのでしょうか。 まずは、エアコンの設定温度に関して何℃が適切なのかという、基準について紹介します。
「夏28℃、冬20℃」はエアコンの設定温度ではない
環境省は、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すために、「夏は28℃、冬は20℃」の室温を推奨しています。しかし、エアコンの設定温度は、夏は28℃、冬は20℃にすればいいというわけではありません。この温度は、エアコンを稼働することによる室温の目安なのです。室温は、エアコンの設定温度通りになるとは限りません。エアコンからの温風・冷風の届く範囲は限られていますし、室内には、家具や柱などの遮蔽物もあります。また、窓に近いか遠いかでも、温度は異なります。さらに、オフィスであれば室内に人が多く、プリンターやコピー機といった熱を発する機器もあるのです。こうして、エアコン設定温度を28℃や20℃に設定しても、室温がどうなるかは環境によって変わってしまいます。
環境省の推奨する室温を実践するには、室内に温度計を置き、それを目安にするのがおすすめです。

年齢・性別などでも体感温度は違う
実際の温度ではなく、人が感覚的に感じる温度のことを体感温度といいます。この体感温度は、性別や年齢、さらに体型によっても差があるため、状況によってはエアコンの適切な設定温度が変わってきます。 例えば、女性は男性と比べると体が小柄で、筋肉量が少ない人が多い傾向があります。筋肉量が少ないと基礎代謝が低くなり、体が冷えると感じる(体感温度が低い)ことが多くなります。男女のあいだでは、体感温度に3~5℃の差があるといわれることも。 同様に、筋肉質な人よりもやせている人のほうが寒さに弱いとされています。また、年齢を重ねて体温調節機能や筋肉量が低下している高齢者は寒さを感じやすく、体温調節機能が未発達な乳幼児は、暑さも寒さも感じやすいといわれています。 このように、年齢・性別・体格などによって体感温度には個人差があるため、特に室内に複数の人がいるような場合は、エアコンの設定温度に注意が必要です。

無理な設定温度は健康に良くない
省エネルギーのためとはいえ、無理をしてエアコンの設定温度を変更する必要はありません。大切なのは、快適性を損なわない範囲で省エネルギーを目指すこと。エアコンの温度の無理な設定は、健康に良くありません。
例えば、熱中症といえば暑い屋外で発症するイメージがありますが、消防庁の「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、発生場所で最も多いのは住居(38.0%)となっています。さらに、日本生気象学会の「日常生活における熱中症予防指針 Ver.3.1」によれば、温度が28℃以上になると熱中症のリスクが高まり厳重警戒域に入るとし、「室内では室温の上昇に注意する」ことを注意事項としています。
また、気温が低すぎるのも健康に良くありません。厚生労働省の「室温と高血圧、睡眠の関係」は、室温の低さと血圧に関連性があるとし、室温が18℃以下で高血圧のリスクが高いとしています。また、WHO(世界保健機関)も、室温18℃以上を推奨しています。
エアコンの設定温度は、夏は25~28℃、冬は19~22℃を目安に調整するのがおすすめです。

■日常生活における熱中症予防指針
← スクロールできます →WBGTによる温度基準域 | 注意すべき生活活動の目安 | 注意事項 |
---|---|---|
危険 31℃以上 |
すべての生活活動でおこる危険性 | 高齢者においては安静状態でも発生する危険性が大きい。外出はなるべく避け、涼しい室内に移動する。 |
厳重警戒 28℃以上31℃未満 |
外出時は炎天下を避け、室内では室温の上昇に注意する。 | |
警戒 25℃以上28℃未満 |
中等度以上の生活活動でおこる危険性 | 運動や激しい作業をする際は定期的に充分に休息を取り入れる。 |
注意 25℃未満 |
強い生活活動でおこる危険性 | 一般に危険性は少ないが激しい運動や重労働には発生する危険性がある。 |
エアコンの設定温度調整で起こる変化
エアコンの設定温度を状況に合わせて、適切に調整することは健康への悪影響を抑えるだけでなく、ほかにもメリットがあります。エアコンの設定温度を適切にすることで起こる変化についてご紹介しましょう。
電気代が変わる
エアコンの設定温度を適切にすると電気代が変わります。一般的に、エアコンは冷房時よりも暖房時のほうが、消費電力が大きいとされますが、冷房時の温度設定を1℃上げると約13%、暖房時は1℃下げると約10%の電力が削減できるといわれています。 設定温度を少し調整するだけで大きな節電効果が得られ、電気代の節約につながるのです。

環境への影響が変わる
エアコンの設定温度を適切にすると、環境への影響も変わります。消費電力を抑えられるということは、それだけCO2の削減になり、環境への負荷を軽くすることにもなります。 経済産業省の試算では、エアコンの温度設定を1℃変えるだけで、年間約14~25kgのCO2を削減できるとしています。
■エアコンの設定温度による変化
運転モード | 温度設定 | 電力の削減量(年間) | CO2 の削減量(年間) |
---|---|---|---|
冷房 | 27℃から28℃へ | 30.24kWh | 14.8kg |
暖房 | 21℃から20℃へ | 53.08kWh | 25.9kg |
一人ひとりの省エネ効果は小さなものでも、数が集まれば大きな力となります。毎日の行動の中で少しずつ、環境への影響を考えながら行動してみてはいかがでしょうか。

エアコンの設定温度を変えずに快適に過ごすコツ
室内で快適に過ごすために、エアコンの設定温度を、高く(低く)したいときもあるでしょう。そのようなとき、エアコンの設定温度を変えなくても、少しの工夫でより快適に過ごすことが可能です。 ここでは、エアコンの設定温度を変えずに快適に過ごすコツをご紹介します。
風向きを調節する
エアコンの風向きを調節することで、エアコンの設定温度を変えなくても暖かさ、涼しさをより感じることができます。 空気は温度が上がると上昇し、下がると下降する性質があります。そこで、冬は暖かい風を下向きに、夏は水平、または上向きに吹き出すように風向きを設定すると、室内の空気がまんべんなく攪拌されて、快適な温度にすることができます。 なお、人感センサーを搭載しているエアコンは、室内のどこに人がいるか、体表温度はどれほどかを検知して、最適な運転を行います。こうしたモデルを使用している場合は、風向き調整は必要ありません。

風量を上げる
エアコンの風量を上げることで、室内の温度をより快適にすることが可能です。設定温度はそのまま、風量だけを強くすると、暑さ寒さがやわらぎ、より快適に感じられるようになります。 前述のように、暖かい空気は部屋の天井近くに、冷たい空気は床近くに集まります。風量が弱いと、この寒暖の空気の層を動かすことができず、温度調節が難しくなるのです。 エアコンの風量を強くすると、空気の層が撹拌されて、部屋の温度が均一になります。なお、風量を上げるだけであれば、消費電力に大きな影響はありません。 春先や秋口など、季節の変わり目には、顔の周りは暖かいのに、足元だけ妙に寒いということもあります。そのようなときには、この方法を試してみてください。

エアコンの自動運転モードを活用する
エアコンの自動運転モードを活用すれば、室内を適正温度に保つのが簡単です。エアコンは、電源を入れてから室温が設定温度になるまで、フルパワーで急速に暖房・冷房を行うため、このときが最も消費電力が多くなります。自動運転モードに設定すると、エアコンは室温が設定温度になるまで、パワフルかつ効率良く運転し、その後は室温を保つよう、微風運転に切り換えます。 自動運転を上手に使うことで、省エネと同時に快適な室温を保つことができます。

サーキュレーターを併用する
エアコンとサーキュレーターを併用することで、室温を快適に調整することができます。サーキュレーターで室内の空気を撹拌させることで、冷暖房効果を高めることができるのです。 サーキュレーターは直線的な強い風を遠くまで届けることができます。そのため、冷房時にはエアコンの下あたりに、エアコンに背を向ける形でサーキュレーターを置きましょう。すると、エアコンから降りてきた冷たい空気を、遠くまで届けることができます。 暖房時は、エアコンの対角線上に、サーキュレーターを上に向けて置くことで、天井近くに溜まった暖かい空気を部屋中に広げることができます。

除湿や加湿で体感温度を調整する
除湿や加湿により湿度を調節することで、エアコンの設定温度を変えずに快適に過ごすことが可能です。快適な室内環境には、温度だけでなく湿度も大きく関係しています。体感温度は、湿度が高いほど暖かく感じ、反対に湿度が低いほど、寒く感じるという特性があるのです。
日本の夏は湿度が高いため、ムシムシと暑いもの。そこで、夏にエアコンを除湿運転すると、温度を変えなくても室温が下がったように快適に過ごすことができます。同様に、空気が乾燥して芯まで冷えるような冷たさを感じる冬は、加湿器などで湿度を高めることで、低めの設定温度でも暖かく感じられるでしょう。

エアコンの電源を頻繁にオンオフしない
エアコンの電源のオンオフ回数を減らすことも、設定温度を変えずに快適に過ごすコツのひとつです。 電気代がもったいないからと、エアコンの電源を頻繁に入れたり切ったりすると、かえって電力の無駄遣いになります。外出してしばらく帰らないような場合は、電源を切ったほうがいいのですが、30分程度の短時間の外出であれば、つけっぱなしのほうが電気代を節約することができます。エアコンは、室温を設定温度にするまでのあいだが、一番電力を消費します。そのため、温度を保つことが電力節約につながるのです。

エアコンのフィルターを定期的に掃除する
エアコンのフィルターを定期的に掃除することで、エアコンの設定温度を変えずに快適に過ごすことが可能です。 エアコンのフィルターは、運転するたびにほこりが溜まっていきます。これを放置すると、フィルターが詰まって風の通りが悪くなり、エアコンの効きが悪くなってしまうのです。エアコンのフィルター掃除は、2週間に1回が目安とされています。掃除機でほこりを吸い取り、必要なら水洗いをして、しっかりフィルターを掃除してください。なお、環境省によれば、フィルターを掃除するだけで、冷房時に4%、暖房時には6%の節電ができるといいます。

室外機の周辺環境を整える
エアコンの室外機周辺の環境も、エアコンの設定温度に影響します。例えば、室外機のファンの前に物を置くと、ファンからの風がうまく逃げず、冷暖房の効率が悪くなってしまいます。また、積雪の多い地方なら雪除けのひさしを作ったり、夏は直射日光があたらないように日除けを設置したりするといった工夫も効果的です。

カーテンや断熱シートを活用する
カーテンや断熱シートを活用することで、室温を調整して快適に過ごすことができます。 暑さや寒さが室内に入り込む出入口として、一番大きいのは窓です。窓からの熱の出入りを抑えられれば、冷暖房効果が高まります。二重サッシや複層ガラスを導入すれば万全ですが、コストがかかります。そこで手軽なのは、断熱効果のあるカーテンに付け替えること。また、窓ガラス全体に貼る、透明の断熱シートもあります。
※カーテンの測り方&豆知識の記事はこちら

ドア・窓をしっかり閉める
ドアや窓の開閉に注意することも、エアコンの設定温度を適切に保つためのコツです。 屋外の熱気や冷気は、わずかな隙間から家の中に入ってきます。冷暖房時には、ドアや窓をしっかりと閉めて、気密性を高めておくことが大切です。 ただし、衛生・健康面から定期的な換気は必要です。エアコンは、比較的空気を汚しにくい冷暖房機器ですが、室内の状況に合わせて、適宜、空気の入れ換えを行ってください。

服装で調整する
夏は薄着に、冬は1枚余計に羽織るなど、服装で調節することで、エアコンの設定温度を変えずに快適に過ごすことができます。冬場は足元から冷えてきますから、厚手のソックスや起毛のスリッパ、薄手のアンダーパンツなどを活用するのもおすすめ。デスクワークにはひざ掛けやストールが、手軽な防寒アイテムとして使えます。夏場であれば、暑さを感じさせない冷感シャツなどを組み合わせて使うことで、少々室温が高くても快適に過ごすことが可能です。自宅かオフィスかでスタイルは大きく変わりますが、その場に合った防寒・防暑スタイルを考えてみてください。

エアコンの設定温度を調節して快適に過ごそう
エアコンの設定温度は、その時々の体感で調整している方も多いのではないでしょうか。しかし、温度設定ひとつで、暑さ寒さの感じ方や消費電力は大きく変わります。 エアコンの設定温度を適切に調整して、電力消費量を少なく抑えながら、快適な室内環境を作りましょう。 なお、エアコンの性能や省エネ効率は年々向上しています。エアコンの消費電力が気になる方や、エアコンの効きが悪いと感じる方は、新しいモデルへの買い替えも考えてみてはいかがでしょうか。